金曜の夕方5時半。カシコは職場のパソコンで、今週の報告書を開いていた。提出は6時。必要な欄は埋まっているのに、見出しの言葉を変えたり、表の幅をそろえたりしているうちに、また時間が過ぎていた。
直したところを戻し、また直す。机の端には、すっかり冷めたお茶が置かれていた。
画面の横に、灰色のナゾタマが浮かび上がる。表面には細かい目盛りが刻まれていて、端までたどり着くたびに、その先へ新しい目盛りが増えていく。
\ ナゾタマ発生! /
【完璧主義】
机の仕切りにとまっていた青い鳥のワイズが、画面をのぞいた。
そう言いながら、カシコは画面の隅の時計を見た。納得できるまで直していると、帰る時間がいつも後ろへずれてしまう。
丁寧に取り組みたい気持ちは、そのまま持っていてかまいません。ここでは、仕事や暮らしで「どこまでやれば十分なのか」を考えるために、目的・必要な確認・あとから足している条件の3つを見ていきます。
1. それは、何のために使うもの?
カシコは依頼のメッセージと報告書を、画面に並べた。
カシコは、三度変えた見出しを見つめた。伝える内容が変わったわけではなかった。
「ちゃんとする」「いいものにする」だけでは、終わりを判断しにくいことがあります。誰が、何のために使うのかを、一文にしてみる。 それが「これで十分」を考える出発点になります。
相手の求める内容がわからないときは、自分一人で高い基準を想像し続けず、「今回は、進捗と相談事項がわかる形でよいですか」と確認することもできます。必要な作業が時間内に収まりそうにないなら、優先する項目や期限を相談する、という進め方もあります。
2. 「7割でOK」で、何を省いていいの?
カシコは付箋に、その三つを書いた。
「7割」は、完成度を正確に測る数字ではありません。必要な情報や決められた確認を省く合図にもなりません。 使うなら、「全部を同じだけ磨こうとしていないかな」と立ち止まるための言葉くらいに考えてみてください。
たとえば、次のように分けられます。下の表は一例なので、仕事の決まりや暮らしの事情に合わせて変えてかまいません。
| 場面 | 今回、満たしておきたいこと | 追加するか選べること |
|---|---|---|
| 社内の進捗報告 | 状況・日付が正しく、相談事項が伝わる | 内容が同じままの言い換えや飾りを増やす |
| 友達との待ち合わせ連絡 | 日時・場所・返事がほしいことがわかる | 絵文字や語尾を何通りも比べる |
| 夕食前のテーブルの片づけ | 食事を置ける広さを空け、汚れを拭く | その流れで引き出しの中まで整理する |
見た目を整えることにも意味があります。文字が小さくて読めないなら直したいし、色で作業の状態を区別しているなら、その色は情報の一部です。「内容は大事、見た目は全部不要」と決める必要はありません。
ナゾタマの細かい目盛りのうち、いくつかが淡くなった。どれも同じ強さで光っていたときより、目を向けたいところが見える。
3. 終わる直前に、条件を増やしていない?
必要な確認を終え、カシコは保存ボタンを押した。それでも、まだ画面を閉じる気になれない。
カシコは椅子の背にもたれた。
あとから浮かんだ修正は、「今回必要になったものか」「もっとよくしたくて追加しているものか」を確かめてみる。 新しい誤りや必要な情報に気づいたなら、直してかまいません。一方、目的を満たしているのに仕上げを増やしているなら、今回は加えない選択もできます。
時計は5時50分を指していた。カシコは送信し、パソコンを閉じた。少し心もとなくて、もう一度開きたくなる。
それでも今日は、必要な確認を終えたところで席を立った。

4. 修正を頼まれたら、「やっぱりダメだった」?
月曜の昼休み。カシコは、報告書に届いた返事をワイズに見せた。
「進捗は把握できました。相談事項には、次回から関係する担当者の名前も添えてください」
修正点があれば、内容を確かめて対応する。その一方で、一つの指摘から「全部ダメだった」「自分は仕事ができない」と結論を広げなくてもかまいません。
カシコは、使い終わった付箋を手帳に挟んだ。毎日できたかを採点するためではなく、終われなくなった日に思い出すために。
5. 今日の一つに、「ここまで」を決めてみる
その晩、カシコは夕食を前に、テーブルの上の郵便物をまとめた。引き出しにしまおうとして、中も散らかっていることに気づく。
郵便物はいったん脇のかごへ。テーブルを拭き、温かいご飯を運んだ。引き出しの整理は残っている。それでも、夕食を始める場所はできていた。
ナゾタマは、かごの横に小さく浮かんでいた。表面の目盛りはまだ消えていない。でも、その先に新しい目盛りが増えても、今は追いかけずに座っていられる。

ここまで読んでくださったあなたへ。
「これで十分」を決めるときは、何のために使うのか、必要な確認は何か、あとから条件を足していないかを、目の前の一つで考えてみてください。
たとえば、次に送る連絡なら「日時と場所が伝わり、相手が返事をできる」。片づけなら「食事を置ける場所ができる」。自分の作業に合う言葉で、いったん終われるところを一文にしてみるだけでもかまいません。
疲れている日に、その一文まで上手に考えようと頑張る必要はありません。今日終えなくてもよいことなら、途中のまま休んでも大丈夫です。
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丁寧にしたい気持ちを残したまま、今日はここまで、と手を離せるところを一つ見つけられたら。それも、あなたの暮らしに合うやり方です。

