1. 「もし今、何かあったら…」急な出費が怖くなる
日曜日の午後。
カシコはローテーブルにノートパソコンを広げて、今月の支出を見直していた。
画面をスクロールするたびに、肩が少しずつ下がっていく。
カシコ(ため息)うーん…また今月もギリギリだ…
先月は洗濯機が急に動かなくなって、修理代がかかった。
その前は、歯医者の治療費。
予定していなかった出費が、次から次へとやってくる。
カシコもし今、また何か起きたらどうしよう…。そんな余裕、どこにもないよ…
そのとき、テーブルの上に、くすんだ灰色の玉がころんと転がり出てきた。
表面には、ひびのような細い線が何本も走っている。
カシコがため息をつくたびに、玉はぴくっと小さく震えた。
カシコえっ…ナゾタマ?
窓のほうから、羽音がひとつ。
相棒のワイズが、パソコンの横にちょこんととまった。
ワイズどれどれ。カシコ、ずいぶん考え込んでるねぇ。
カシコうん…。急に大きなお金が必要になったら、と思うと不安で…。貯金もほとんどないし、何か起きたら即アウトだよ。
ワイズふむふむ。このナゾタマ、カシコの『もしも』の不安が形になったものみたいだね。
そんな経験、あなたにもありませんか?
- 家電の故障や病院代など、予定外の出費が続いて落ち込む
- 「今、何かあったら払えない」と思うと、ずっと落ち着かない
- 貯金したい気持ちはあるのに、毎月ほとんど残らない
お金の不安は、手元の金額だけでなく、「何かあったらどうしよう」と先が見えない感覚からも大きくなりやすいものです。
今日は、カシコと一緒に、急な出費への備え方を見ていきましょう。
2. 急な出費に備える「生活防衛費」って何?
ワイズまず知っておいてほしいのが、生活防衛費というお金なんだ。
カシコ生活防衛費…? ただの貯金とは違うの?
ワイズいい質問だね。生活防衛費は、『もしも』のときのために取っておくお金のことさ。家電が急に壊れたときのような予定外の出費だけじゃなくて、病気やけがで働けなくなったり、仕事が減ったりして、収入が下がったときにも、しばらく暮らしを支えてくれるんだ。
カシコでも、今の生活費でいっぱいいっぱいなのに…
ワイズたとえば、綱渡りを想像してみて。下に網が張ってあるのと、ないのとでは、同じ一本の綱でも、歩くときの怖さがぜんぜん違うよね。
カシコたしかに…。網がなかったら、一歩も進めないかも。
ワイズ生活防衛費は、その網なんだ。落ちないためのものというより、落ちても大丈夫だと思えるためのもの。網があるだけで、毎日の綱渡りが少しラクになるんだよ。
カシコなるほど…。じゃあ、普通の貯金と一緒にしておいちゃダメなの?
ワイズ一緒にしておくと、気づかないうちに使ってしまいやすいんだ。毎月の生活費は出ていくお金、生活防衛費は『もしも』まで手をつけないお金。だから、生活費とは別の場所に分けておくのがポイントだよ。置き場所は、必要なときにすぐ引き出せる普通預金などにしておくと安心だね。
カシコじゃあ、家電の買い替えも、全部ここから払うの?
ワイズ何年かすればいずれ来る、と分かっている出費は、特別費として別に少しずつ用意しておく方法もあるよ。そうしておくと、網に穴があきにくいんだ。
- 生活防衛費は、急な出費や収入が減ったときに暮らしを支えるお金
- 普段の生活費や、ほかの目的の貯金とは分けておく
- 「何かあっても大丈夫」と思える安心感そのものが、いちばんの役割
3. 生活防衛費は、いくら貯めればいい?
カシコでも、どれくらい貯めればいいんだろう? 多ければ多いほどいいのかな?
ワイズよく言われる目安は、生活費の3〜6か月分だね。たとえば毎月の生活費が15万円なら、45万〜90万円くらい。収入が安定しているか、一人暮らしか家族がいるかでも、必要な金額は変わってくるよ。
カシコえっ!? そんなに? 正直、無理かも…
カシコの声に合わせるように、ナゾタマがぶるっと震えた。
ワイズそうそう、最初からその金額を目指すと、しんどくなっちゃうよね。だから、目標は小さく区切っていいんだ。たとえば、まずは1万円。次は3万円、その次は10万円…という感じでね。
カシコ1万円からでいいの…?
ワイズうん。金額はあくまで一例だよ。1万円でも、急な出費のときに『全部をカードで払わなくてすむ』だけで、気持ちはずいぶん違う。10万円まで来たら、急な修理や病院代にも慌てずにすむ場面が増えてくるはずさ。そこから少しずつ、生活費の数か月分に近づけていけばいい。
カシコそれなら、ちょっと気が楽かも。最初から大きな網を張らなくてもいいんだね。
ワイズそういうこと!小さな網でも、あるのとないのとでは、ぜんぜん違うからね。
- よく言われる目安は生活費の3〜6か月分(暮らし方や収入で変わる)
- 最初は1万円、3万円…と小さく区切っていい
- 目標を達成したら、少しずつ次の金額を目指していく
4. 無理なく貯めるための3つのコツ
カシコでも、毎月ほとんど残らないのに、どうやって貯めればいいんだろう…
ワイズ残ったら貯めよう、だと、なかなか残らないものなんだ。だから、仕組みのほうを変えてみよう。
① 給料日に、自動で分ける
ワイズ給料が入ったら、決まった金額が自動で別の口座へ移るように設定しておく方法があるよ。銀行によっては、ひとつの口座の中で目的ごとにお金を分けておける機能もあるんだ。
カシコでも、毎月ギリギリなのに先に移しちゃったら、生活費が足りなくならない?
ワイズいいところに気づいたね。だから、最初は月1,000円や3,000円みたいに、移しても暮らしが回る金額から始めればいいんだ。それでも毎月足りなくなるなら、無理に貯金を増やさなくていい。出ていくお金を見直して、家計を立て直すところから始めてもいいんだ。
カシコそっか…。貯める前に、足りなくならない形をつくるのが先なんだ。
ワイズそういうこと。少しでも続けられる金額が見つかったら、あとは意識しなくても積み上がる流れにしておくのさ。
② 「なんとなく出ていくお金」を見直す
ワイズ使っていないサブスクや、なんとなく続けている出費がないか、一度見てみるのもおすすめだよ。
カシコあ…見てない動画サービス、まだ払ってるかも。
ワイズ見直して浮いた分を、そのまま網のほうへ回せば一石二鳥だね。
③ 余裕があれば、収入の入り口を増やす
ワイズ時間と体力に余裕があるなら、収入を少し増やす方法を考えてみるのも、ひとつの手だね。
カシコ副業かぁ…。今すぐは難しいけど、頭の片すみに置いておこうかな。
ワイズうん、それでいいと思うよ。疲れているときに無理をすると、かえって出費が増えることもあるからね。
5. 貯まる前に急な出費が来たら?
カシコでも、貯まる前に何か起きたらどうしよう…。それがいちばん怖いんだよね。
ワイズその不安も、もっともだね。そういうときは、慌てて借りる前に、確かめられることがいくつかあるんだ。
① 使える制度や保険がないか確かめる
ワイズ医療費なら、ひと月に窓口で払った額が上限を超えたとき、超えた分が支給される制度(高額療養費制度)があるんだ。ただ、対象は健康保険がきく診療の分で、入院中の食事代や差額ベッド代などは入らない。上限の金額も年齢や収入で変わるし、制度が見直されることもあるから、加入している健康保険に確かめてみよう。
📌 制度の最新の内容は、厚生労働省のページで確かめられます
→ 高額療養費制度(厚生労働省)
ワイズ家電なら、保証期間や延長保証が残っていないかも見てみよう。入っている保険で、使えるものがあるかもしれないね。
② 使っていないものを手放す
ワイズ家の中で眠っているものを、フリマアプリやリサイクルショップで売る方法もあるよ。部屋もすっきりするかもしれないね。
③ 一人で抱え込まずに、相談する
ワイズ家族や身近な人に、正直に相談してみるのもひとつの選択肢さ。
カシコでも、家族に頼れない人もいるし、売れるものがない人もいるよね…
ワイズうん、そうだね。そんなときは、住んでいる地域の自立相談支援機関という窓口もあるよ。仕事や暮らし、お金の困りごとをまとめて相談できて、地域によっては家計の見直しを一緒に考えてくれる支援(家計改善支援)もあるんだ。
カシコそんな窓口があるんだ…。
ワイズそれから、支払いが間に合わなそうなら、期限の前に支払先へ連絡してみるのも手だよ。分け方や時期を相談できる場合もあるからね。
📌 地域の相談窓口は、厚生労働省のページから探せます
→ 生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)
カシコクレジットカードやローンは、使っちゃダメってこと?
ワイズダメってわけじゃないよ。ただ、カードの一括払いでも、引き落とし日に払えるかは先に確かめておきたいね。リボ払いやキャッシング、ローンは、毎月の支払いが小さく見えても、手数料や利息で返す総額が増えやすいんだ。使うなら『いつまでに、どうやって返すか』を先に決めてからにしよう。
カシコ困ったら、早めに誰かに話していいんだね。
ワイズそういうこと。一人で抱え込まないことが、いちばん大事なんだ。
- まずは使える制度・保証・保険を確かめる
- 頼れる人がいなくても、地域の窓口や支払先に相談できる
- 借りるなら、手数料・利息と返す計画を先に確かめてから
6. 「備えがある」と思えるだけで、不安は小さくなる
カシコは、ノートパソコンの画面をもう一度見つめた。
カシコ全部いっぺんにはできないけど…まずは別の口座をひとつ決めて、給料日に少しだけ移すところからやってみる。1万円の網から、張ってみたい。
ワイズうん、いい一歩だね。
カシコがそっとナゾタマに触れると、表面のひびのような線が、やわらかな光の糸に変わりはじめた。
細い糸が、ゆっくりと網の目のようにつながっていく。
灰色は、まだ少しだけ残っている。
それでも、ナゾタマはもう、ぴくりとも震えていなかった。
カシコまだ少し怖いけど…前より、ちょっと落ち着いてる気がする。
ワイズそれで十分さ。怖さがあるから、備えようと思えるんだからね。
7. 不安をゼロにしなくていい。小さな網から始めよう
ここまで読んでくださった、あなたへ。
「もし今、何かあったら…」
そう思うだけで、胸がぎゅっとなる日もありますよね。
でも、大丈夫。
お金の不安は、一日で消えるものではありません。それでも、網は今日からでも少しずつ広げていけます。
- 1生活費とは別に、生活防衛費の置き場所をひとつ決める
- 2給料日に自動で移す金額を、暮らしが回る範囲で決めてみる
- 3入っている保険や保証、困ったときの相談先を一度だけ確かめておく
生活防衛費は、未来の自分のために張っておく小さな網。
あなたの毎日が、少しでも安心して歩けるものになりますように。