1. 3日前の私は、あんなにやる気だったのに
平日の夜。
カシコは、机の上に開いたままの資格テキストを、じっと見ていた。
開いてから、もう10分。
ページは、1ミリも進んでいない。
3日前の私、あんなにやる気だったのに
始めた日のことは、よく覚えている。
テキストを買って、勉強計画を立てて、
その日は2時間ぶっ通しでやった。
「私、変われるかも」って、本気で思った。
それが今日は、ページを開くだけで精一杯。
自分で作るものなんだよね。
それは、もう知ってるんだ。
とりあえず始めれば、エンジンがかかるって
作ったやる気が、もう切れかけてるのは、
どうすればいいの
そのとき、テキストの横に、
コマのようにくるくる回る球体が、現れた。
ただ、その回転は、見るからに弱々しい。
ぐらり、ぐらりと、いまにも倒れそうに揺れている。
(ナゾタマが、回転を落として、ぐらぐらと揺れている)
ずいぶん、息切れしたナゾタマだねぇ
電気スタンドのかさの上から、ワイズが見下ろしていた。
私のやる気、初日は全開だったのに、
3日でこれだよ。
やっぱり私、飽きっぽいのかな
じゃあ、ひとつ聞くね。
カシコ、初日は何時間やったの?
計画も立てたし、ノートもまとめたし
……たぶんね、犯人はそこだよ
2. 初日のやる気は、「ご祝儀」みたいなもの
特別なやる気が出てなかった?
“私、変われるかも”みたいな
なんか、無敵な気分だった
“ご祝儀のやる気”なんだ
始めたばかりの新鮮さが、
特別ボーナスみたいに、
やる気を上乗せしてくれてるの
毎日は出ない。
新鮮さが薄れると、すーっと引いていく
じゃあ、3日目でやる気が減ったのは……
“通常運転”に戻っただけなんだ。
ボーナスの期間が、終わっただけ
私が飽きっぽいわけじゃ、ないんだ
問題はね、やる気が減ったことじゃない。
初日の自分を”基準”にしちゃったことなんだ
あれは”ご祝儀込みの自分”が立てた計画でしょ。
通常の自分には、最初から重すぎるんだよ
燃料がたまたま多めに入ってただけ。
その量を、毎日の基準にしないことが大事なんだ
カシコは、ぐらぐら揺れるナゾタマを見た。
初日にぶんぶん回しすぎて、
息切れしているように見えた。
- やる気が減るのは故障ではなく、「通常運転」に戻っただけ
- ご祝儀込みの初日を基準に計画すると、普通の日が全部つらくなる
3. 全開のアクセルでは、遠くまで走れない
その先で減っていくなら、
どうやって続ければいいの?
カシコ、車の運転で考えてみようか
初日のカシコは、
アクセルを床まで踏み込んでた状態なんだ
たしかに、飛ばしてたかも
燃料がすごい勢いで減るし、
エンジンも熱くなる。
長距離には、向いてないんだ
一定の、ゆるやかな速度で走る。
“巡航速度”っていうんだけどね
全速力じゃない。
でも、止まらない。
“この速さなら、ずっと走れるな”っていう速度

2時間じゃなくて、20分とか?
ちょうどいい巡航速度だね。
物足りないってことは、余力があるってこと。
余力は、明日のやる気の燃料になるんだ
ちゃんと進むのかな
毎日少し残せるくらいのほうが、
次の日に、戻ってきやすいんだ。
続いてさえいれば、距離はあとから伸びていくよ
やりきって終わるより、
ちょっと残して終わるほうが、いいんだ
4. 「低速ギア」を、先に決めておく
巡航速度でも走れない日のために、
“低速ギア”を用意しておくといいよ
これだけならできるっていう、
一番かるい設定のこと
📌 たとえば、こんな3段ギア。
しんどい日:1問だけ解く
どうにもならない日:テキストを開いて、1ページ眺めるだけ
眺めるだけでいいの?
大事なのは、進んだ距離じゃなくて、
エンジンを止めないことだから
いちばん力がいるんだ。
ゆっくりでも動いてれば、
また速度を上げるのは、簡単なんだよ
1日サボると、次の日の腰が、
ほんとに重いんだよね
だから、低速ギアの日は、
サボりじゃない。
“止まらないための運転”なんだ
📝 先に決めておく、3段ギア
- ふつうの日:問題を20分解く
- しんどい日:1問だけ解く
- どうにもならない日:テキストを開いて、1ページ眺めるだけ
大事なのは、進んだ距離ではなく、エンジンを止めないこと。
低速ギアの日は、サボりではなく「止まらないための運転」。
5. 今日は「1問だけ」の日にした
カシコは、机のテキストに、向き直った。
正直、今夜のやる気は、ほとんど残っていない。
でも——
1問だけ、解いて終わろう)
ページを開いて、1問。
解き終わって、丸をつける。
もう1問いけそうな気もしたけれど、
カシコは、そこでテキストを閉じた。
ゼロじゃない。エンジンは、止まってない
ふと見ると、机の上のナゾタマが、
ぐらぐらした揺れをやめていた。
回転は、初日よりずっと、ゆっくりだ。
でも、もう倒れそうには見えない。
静かに、安定して、回り続けている。

(ナゾタマは、速く回るのをやめた。
そのかわり、回り続けられるようになった)
いけなくても、1問がある。
どっちでも、前に進んでるよ
ここまで読んでくださった、あなたへ。
「始めた日はやる気満々だったのに、3日で失速する」
「減っていくやる気を、どうすればいいのか分からない」
そんなカシコの姿に、心当たりがあった方も、いるかもしれません。
でも、やる気が続かないのは、あなたが飽きっぽいからではありません。
初日の「ご祝儀のやる気」を基準にすれば、誰だって息切れします。
- やる気が減るのは、壊れたのではなく「通常運転」に戻っただけ。初日の自分を基準にしない
- 全開ではなく「巡航速度」。少し物足りないくらいが、いちばん長く走れる
- しんどい日のための「低速ギア」を先に決めておく。眺めるだけでもエンジンは止まらない
今日からできるのは、ほんの小さなことだけ。
- 1いまの計画を見て、「ご祝儀込みの自分」が立てていないか、一度だけ確かめてみる
- 2ふつうの日・しんどい日・どうにもならない日の「3段ギア」を決めておく
- 3低速ギアの日は「サボった」ではなく「止まらなかった」と数える
やる気は、作って終わりじゃない。全開で走るより、止まらないで走る。
あなたのナゾタマも、ゆっくりでいい。回り続けていれば、それで十分です。
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