完璧主義をやめたい|「これで十分」を決める3つの考え方

「完璧主義をやめたい」「『これで十分』を決める」「3つの考え方」の文字と、夕方の机で書類を前にするカシコ、青い鳥のワイズ、下書きの横の赤茶色のナゾタマを描いたイラスト。 思考・マインドセット
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金曜の夕方5時半。カシコは職場のパソコンで、今週の報告書を開いていた。提出は6時。必要な欄は埋まっているのに、見出しの言葉を変えたり、表の幅をそろえたりしているうちに、また時間が過ぎていた。

カシコさっきの言い方のほうがよかったかな…。あ、この列も少し狭い?

直したところを戻し、また直す。机の端には、すっかり冷めたお茶が置かれていた。

画面の横に、灰色のナゾタマが浮かび上がる。表面には細かい目盛りが刻まれていて、端までたどり着くたびに、その先へ新しい目盛りが増えていく。

\ ナゾタマ発生! /
【完璧主義】

カシコ完璧主義をやめたい…。丁寧にやってるつもりなのに、いつも終わらないんだよね。

机の仕切りにとまっていた青い鳥のワイズが、画面をのぞいた。

ワイズさっきから、同じところを行ったり来たりしているね。今、何が気になってる?
カシコ一応できてる。でも、『もっとよくできるのに、このまま出していいの?』って思っちゃう。
ワイズもっとよくしたいんだね。どこまでできたら、今日は終わりにできそう?
カシコそれがわからないから困ってるんだよ…。自分で納得できるまで、かな。

そう言いながら、カシコは画面の隅の時計を見た。納得できるまで直していると、帰る時間がいつも後ろへずれてしまう。

丁寧に取り組みたい気持ちは、そのまま持っていてかまいません。ここでは、仕事や暮らしで「どこまでやれば十分なのか」を考えるために、目的・必要な確認・あとから足している条件の3つを見ていきます。

1. それは、何のために使うもの?

ワイズこの報告書を読む人は、何を知りたいんだろう?
カシコ今週どこまで進んだかと、困っていること。それから、来週相談したいこと。
ワイズその三つは、書いてある?

カシコは依頼のメッセージと報告書を、画面に並べた。

カシコうん。終わった作業、遅れている作業、その理由も書いた。相談したいことも一つ。でも、もっと立派な報告書に見せたくなって…。
ワイズ立派に見せたい、か。今直している見出しを変えると、読み手には何が伝わりやすくなりそう?
カシコ今の言葉でも、内容はわかると思う。どっちのほうがかっこいいかなって迷ってただけかも。

カシコは、三度変えた見出しを見つめた。伝える内容が変わったわけではなかった。

カシコ『よい報告書を作る』だと、いくらでもやることが増えるね。『今週の状況と、来週相談したいことが伝わる』なら、確かめられそう。
ワイズうん。何に使うかがわかると、必要なものを考えやすくなるね。

「ちゃんとする」「いいものにする」だけでは、終わりを判断しにくいことがあります。誰が、何のために使うのかを、一文にしてみる。 それが「これで十分」を考える出発点になります。

相手の求める内容がわからないときは、自分一人で高い基準を想像し続けず、「今回は、進捗と相談事項がわかる形でよいですか」と確認することもできます。必要な作業が時間内に収まりそうにないなら、優先する項目や期限を相談する、という進め方もあります。

カシコでも、求められたことさえ書けば、あとは雑でいいってわけじゃないよね?
ワイズそうだね。じゃあ、ここからは、どこを丁寧に確かめたいかを見てみよう。

2. 「7割でOK」で、何を省いていいの?

カシコ前に『7割くらいでいい』って言われたことがあるんだ。でも、どの3割を省けばいいのかわからなくて。
ワイズそれは迷うね。たとえば、数字が違うままの報告書と、飾りの少ない報告書では、気になるところが違いそうだ。
カシコ数字が違うのは困る。判断を間違えるかもしれないし。見出しの色は…今のままでも、読める。
ワイズカシコの報告書で、先に確認しておきたいことは何?
カシコ作業の状況が合っていること。日付が合っていること。相談したいことが抜けていないこと。

カシコは付箋に、その三つを書いた。

「7割」は、完成度を正確に測る数字ではありません。必要な情報や決められた確認を省く合図にもなりません。 使うなら、「全部を同じだけ磨こうとしていないかな」と立ち止まるための言葉くらいに考えてみてください。

たとえば、次のように分けられます。下の表は一例なので、仕事の決まりや暮らしの事情に合わせて変えてかまいません。

場面 今回、満たしておきたいこと 追加するか選べること
社内の進捗報告 状況・日付が正しく、相談事項が伝わる 内容が同じままの言い換えや飾りを増やす
友達との待ち合わせ連絡 日時・場所・返事がほしいことがわかる 絵文字や語尾を何通りも比べる
夕食前のテーブルの片づけ 食事を置ける広さを空け、汚れを拭く その流れで引き出しの中まで整理する

見た目を整えることにも意味があります。文字が小さくて読めないなら直したいし、色で作業の状態を区別しているなら、その色は情報の一部です。「内容は大事、見た目は全部不要」と決める必要はありません。

カシコ表の幅をそろえるのも、文字が切れていたら必要。でも、今は切れてない。微妙な幅の違いが気になってただけなんだ。
ワイズそこが分かれたね。数字や日付を確かめる時間を、先に使えそう?
カシコうん。全部を7割にするって考えるより、そのほうがわかる。

ナゾタマの細かい目盛りのうち、いくつかが淡くなった。どれも同じ強さで光っていたときより、目を向けたいところが見える。

3. 終わる直前に、条件を増やしていない?

必要な確認を終え、カシコは保存ボタンを押した。それでも、まだ画面を閉じる気になれない。

カシコ…やっぱり、前の週との比較グラフもあったほうがいいかな。
ワイズさっきの三つに、新しいものが加わったね。そのグラフは、今回の相談に必要そう?
カシコ今回は予定が遅れた理由を相談したいんだ。グラフより、どこで止まっているかを書いたほうが伝わると思う。そこはもう書いてある。
ワイズじゃあ、グラフを足したくなったのは、どうしてだろう?
カシコこれで終わりって思ったら、急に物足りなく見えて…。何か足さないと、頑張ってないみたいで。

カシコは椅子の背にもたれた。

カシコ私、『終わっていい条件』を決めても、終わりそうになると足してたんだね。
ワイズ今、それに気づいたんだね。グラフを加えるかどうかは、最初の目的に戻って考えてみようか。

あとから浮かんだ修正は、「今回必要になったものか」「もっとよくしたくて追加しているものか」を確かめてみる。 新しい誤りや必要な情報に気づいたなら、直してかまいません。一方、目的を満たしているのに仕上げを増やしているなら、今回は加えない選択もできます。

カシコもっとよくする工夫まで、やめたくはないんだけど。
ワイズ工夫するのが好きなところもあるんだね。それなら、時間をかけて磨きたいものは選べるよ。今週の報告書には、あとどれくらい使いたい?
カシコ今日は、ここで終わりたい。来月の提案資料には図を工夫したいけど、この報告書まで同じように作らなくていいか。
ワイズうん。どこに力をかけるか、選べたね。

時計は5時50分を指していた。カシコは送信し、パソコンを閉じた。少し心もとなくて、もう一度開きたくなる。

それでも今日は、必要な確認を終えたところで席を立った。

同じデスクで、左はカシコが右手のペンで書類を直し、右はペンを右手側に置いて書類から手を離している2コマのイラスト。

4. 修正を頼まれたら、「やっぱりダメだった」?

月曜の昼休み。カシコは、報告書に届いた返事をワイズに見せた。

「進捗は把握できました。相談事項には、次回から関係する担当者の名前も添えてください」

カシコほら、直すところがあった。やっぱり、もっと考えてから出せばよかったのかな…。
ワイズ担当者の名前があると助かるんだね。金曜に迷っていた見出しの言葉やグラフを直していたら、そこに気づけそうだった?
カシコ…たぶん、別の話だね。名前が必要だっていうのは、今回わかったことだし。
ワイズ今のうちに担当者名を伝えて、次の報告書にも欄を作っておく?
カシコうん。今回足りなかったのはそこだから、そこを直そう。

修正点があれば、内容を確かめて対応する。その一方で、一つの指摘から「全部ダメだった」「自分は仕事ができない」と結論を広げなくてもかまいません。

カシコ直すところはあった。でも、状況は伝わってたんだね。次は名前も入れる。それくらいの振り返りでいいのか。
ワイズうん。次に必要なことが、一つ具体的になったね。
カシコでも、また直しすぎる日はあると思うよ。完璧主義をやめるのまで、ちゃんとやらなきゃって思いそう。
ワイズ今度は、それが新しい課題になると苦しいね。気づいたときに、目の前の一件で考え直せたらどうだろう。

カシコは、使い終わった付箋を手帳に挟んだ。毎日できたかを採点するためではなく、終われなくなった日に思い出すために。

5. 今日の一つに、「ここまで」を決めてみる

その晩、カシコは夕食を前に、テーブルの上の郵便物をまとめた。引き出しにしまおうとして、中も散らかっていることに気づく。

カシコうわ、こっちも片づけたい…。でも、今はご飯を置く場所を空けてたんだよね。

郵便物はいったん脇のかごへ。テーブルを拭き、温かいご飯を運んだ。引き出しの整理は残っている。それでも、夕食を始める場所はできていた。

ナゾタマは、かごの横に小さく浮かんでいた。表面の目盛りはまだ消えていない。でも、その先に新しい目盛りが増えても、今は追いかけずに座っていられる。

木のテーブルの上の、細い目盛りのある灰色のナゾタマを左右に並べ、左は大きく濃く、右は小さく薄く描いた2コマのイラスト。

ここまで読んでくださったあなたへ。

「これで十分」を決めるときは、何のために使うのか、必要な確認は何か、あとから条件を足していないかを、目の前の一つで考えてみてください。

たとえば、次に送る連絡なら「日時と場所が伝わり、相手が返事をできる」。片づけなら「食事を置ける場所ができる」。自分の作業に合う言葉で、いったん終われるところを一文にしてみるだけでもかまいません。

疲れている日に、その一文まで上手に考えようと頑張る必要はありません。今日終えなくてもよいことなら、途中のまま休んでも大丈夫です。

丁寧にしたい気持ちを残したまま、今日はここまで、と手を離せるところを一つ見つけられたら。それも、あなたの暮らしに合うやり方です。

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